AI for Science
心理学研究のための 生成AI利用ガイド
はじめにお読みください
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本ガイドの概要
本ガイドは、「心理学研究における生成AIの利用範囲を俯瞰的に整理すること」と「それらの利用可否をAI初心者に簡潔に示すこと」を目的としたものです。心理学教育や研究活動の参考としていただくことを想定しています。学問習得を目指す学生のためのガイドと、成果創出を目指す研究者のためのガイドを別々に整理することで、より妥当なガイドとなるように工夫しています。利用可否の判断は、既存のAI利用ポリシー、制作者の知識や経験、ガイド閲覧者の意見などを総合して判断しています。
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所属や出版社の指針を優先する
本ガイドは統一的見解を示す公的なものではありませんので、あくまでも参考としてご活用ください。AI利用の指針は、分野・組織・出版社などによって異なっており、いまだ統一的見解は定まっておらず、日々変化しています。研究活動におけるAI利用の公的根拠資料として、本ガイドを引用することはできません。
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「正確性」「妥当性」「再現性」「透明性」を意識する
AIによる生成物は、利用者自身がその内容の正確性と妥当性を確認し、自身の責任で利用する必要があります。また、可能な限り第三者が再現可能な形で利用することも重要です。透明性の確保のために、AIの利用を報告することが求められます(例:AIの利用範囲、ツール・モデル・バージョン、プロンプト、出力結果、利用日時、人間による修正内容など)。
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情報漏洩に注意する
AIに入力した情報は、モデル学習への利用などで漏洩する可能性があります。AIサービスによって異なりますので、利用規約や設定を事前に確認したうえで、入力する情報を必要に応じて制限してください。なお、第三者の機密情報はAIへの入力が禁止されているケースがほとんどで、機密情報でなくとも権利所有者が禁じているケースもあります。
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クラウド型ChatGPT最新モデルをチャット形式で利用することを想定
生成AIにはさまざまなモデルがあり、利用するモデルによって精度は全く異なります。また、生成AIの利用形式(チャット形式/エージェント形式/API形式)や、ブラウザなどで動くクラウド環境と自端末内で完結するローカル環境のどちらで利用するかなどによっても、利用可否は異なります。本ガイドでは、これらの差異による混乱を避けるため、広く普及しており精度も高いOpenAI ChatGPTクラウドサービスの最新モデルをチャット形式で利用する状況を想定しています。なお、有料プランでの利用は、最新モデルの十分な利用機会を得て処理精度を確保するために重要です。
学生用ガイド
- 緑:人間によるチェックを行えば、生成AIを利用でき、学習効果の問題も少ない。
- 黄:人間による入念なチェックが求められるが、補助的であれば生成AIを利用できる。あるいは学習効果の問題が懸念される。
- 赤:生成AIを利用してはいけない。あるいは推奨されない。
文献調査
文献データベースの検索式決め
文献データベースで利用するための最適な検索式の検討に利用可能。
先行研究の調査
初期の広範的探索であれば利用可能だが、すべての先行研究の調査を一任することはできない。利用するAIモデルによってハルシネーション(誤った情報を出力すること)の危険性が大きく異なるため注意する。
文献の要約
文献を自分で読み、よく理解できない箇所をAIに尋ねるといった使い方が想定される。本文の入力を伴わない検索方式は、少ない制約で利用可能。本文の入力を伴う方式は、出版社の規約や機関契約の問題がない場合に利用可能。
外国語文献の和訳
和訳して全体像を理解し、自身の研究にとって重要と判断された場合は、オリジナルの言語で丁寧に読解する。本文の入力を伴わない検索方式では、少ない制約で利用可能。本文の入力を伴う方式は、出版社の規約や機関契約の問題がない場合に利用可能。
リサーチクエスチョンの検討
壁打ち程度であれば利用可能だが、テーマの発案から決定までのプロセスを一任することはできない。
実験調査
研究デザイン
壁打ち程度であれば利用可能。学生にとって、研究デザインの設計は学問習得上とくに重要であるため、AIに一任することは避ける。
刺激の作成
研究内容によっては、文・画像・動画・音・3Dモデルなどの刺激生成や、その刺激を呈示するためのシステム開発に利用可能。刺激の妥当性を必ず確認する。
心理測定尺度の翻訳
心理測定尺度の翻訳には、通常、バックトランスレーションなど厳密な手続きが求められる。
実験調査用ソースコードの生成
プログラミング言語を用いた実験調査システムを用いる場合、ソースコードの生成に利用可能。必ず処理内容を理解する。
倫理審査申請
完成済みの研究デザインの情報を読み込ませて、倫理審査の申請書作成に部分的に利用できる。ただし、新たな情報や自身では対応できないことを生成させてはいけない。
事前登録
完成済みの研究デザインの情報を読み込ませて、事前登録システムへの情報入力に利用できる。ただし、新たな情報を生成させてはいけない。
データ分析
分析方針の検討
壁打ち程度であれば利用可能。
分析用ソースコードの生成
データ分析用プログラミング言語のソースコードの生成に利用可能。必ず処理内容を理解する。
分析結果の解釈
統計学的解釈に利用可能。ただし、考察にはそのまま利用せずに、人間が解釈の最終判断を行う。
データの前処理
AIにデータの前処理として整形や加工などを直接行わせてはいけない。再現性の確保のため、データ分析用プログラミング言語のソースコードを生成して前処理をする。
分析の実施
AIにデータ分析を直接行わせてはいけない。再現性の確保のため、データ分析用プログラミング言語のソースコードを生成して分析する。
グラフや表の作成
AIにグラフや表を直接生成させてはいけない。再現性の確保のため、データ分析用プログラミング言語のソースコードを生成して図表を生成する。
執筆・発表
アウトライン決め
壁打ち程度であれば、発表内容のアウトライン作成に利用可能。
本文の執筆
生成した本文をそのまま利用することはできない。部分的な下書きを生成して人間が修正する方法であれば利用可能だが、文章表現がAI特有となるため非推奨。なお、一部の出版社は下書きの生成も禁止している。
文章の校正
文法の誤り・誤字脱字・表記ゆれなどの部分的なチェックに利用可能。文章表現の改善にも利用できるが、内容に実質的変更が生じる場合は、その妥当性を十分に確認すること。
引用文献リストの作成
DOIなどの書誌情報を入力した下書きの生成に利用可能だが、あくまでも下書きであり、必ずすべての文献についてチェックをする。
引用文献リストと本文の対応チェック
本文中の引用表記との対応関係のチェックに利用可能。
原稿フォーマットとの整合チェック
利用可能だが、完璧に修正されるとは限らないため過信しないこと。
概念図の作成
グラフではなく単純構造の概念図であれば作成に利用可能。ベクターデータなどの編集可能な形式で作成させ、そのデータを人間が修正することが望ましい。ただし、グラフィカルアブストラクトの出力は禁止されていることがある(Elsevier, 2026)。また、意図しない著作権侵害にも気をつける。
スライド・ポスター作成
既存情報のレイアウトのみに利用可能。新たな情報を生成させてはいけない。AIを用いたスライドやポスターは観衆に敬遠されやすいことに注意する。
口頭発表の台本の作成
下書き程度なら利用可能だが、機械的で伝わりづらい台本となる恐れがあるため注意する。
本文の英訳
部分的な英訳に利用可能。すべての翻訳作業について、入念に妥当性をチェックすること。
研究者用ガイド
- 緑:人間によるチェックを行えば、生成AIを利用できる。
- 黄:人間による入念なチェックが求められるが、補助的であれば生成AIを利用できる。
- 赤:生成AIを利用してはいけない。あるいは推奨されない。
- 灰:挑戦的利用。例外的に、チャット形式の生成AIではないものを含む。
文献調査
文献データベースの検索式決め
文献データベースで利用するための最適な検索式の検討に利用可能。
先行研究の調査
初期の広範的探索であれば利用可能だが、すべての先行研究の調査を一任することはできない。利用するAIモデルによってハルシネーション(誤った情報を出力すること)の危険性が大きく異なるため注意する。
文献の要約
本文の入力を伴わない検索型要約は、少ない制約で利用可能。本文の入力を伴う要約は、出版社の規約や機関契約の問題がない場合に利用可能。ただし、重要文献は精読する。
外国語文献の和訳
本文の入力を伴わない検索型要約は、少ない制約で利用可能。本文の入力を伴う要約は、出版社の規約や機関契約の問題がない場合に利用可能。ただし、重要文献はオリジナルの言語で精読する。
リサーチクエスチョンの検討
利用可能だが、学術的意義・新規性・独自性などの観点から、AIが生成したリサーチクエスチョンが人間が生成したものよりも劣る可能性に注意する。
実験調査
研究デザイン
利用可能だが、人間によるチェックが必要。
刺激の作成
研究内容によっては、文・画像・動画・音・3Dモデルなどの刺激生成や、その刺激を呈示するためのシステム開発に利用可能。刺激の妥当性を必ず確認する。
心理測定尺度の翻訳
心理測定尺度の翻訳には、通常、バックトランスレーションなどの厳密な手続きが必要となる。
実験調査用ソースコードの生成
プログラミング言語を用いた実験調査システムを用いる場合、ソースコードの生成に利用可能。必ず処理内容を理解する。
参加者への教示資料の作成
AIが生成した音声などを用いた教示の実施が可能。ただし、同意説明やデブリーフィングなどの倫理的説明事項は人間が実施することが望ましい。
倫理審査申請
完成済みの研究デザインの情報を読み込ませて、倫理審査の申請書作成に部分的に利用できる。ただし、新たな情報や自身では対応できないことを生成させてはいけない。
事前登録
完成済みの研究デザインの情報を読み込ませて、事前登録システムへの情報入力に利用できる。ただし、新たな情報を生成させてはいけない。
心理測定尺度の質問項目の作成
挑戦的利用。質問項目の作成、選定、文章表現の修正などに利用できる可能性がある。
システマティックレビュー・メタアナリシスの実施
挑戦的利用。ツール開発が進んでいる。検索式作成、文献収集、スクリーニング、統計量抽出、バイアスリスク評価などの自動化に利用できる可能性がある。
AIによる回答を研究対象・データとして扱う
挑戦的利用。当然、人を対象とした実験調査のデータと同等に扱うことはできない。
インタビュー・面接の実施
挑戦的利用。臨床面接や診断においては倫理的配慮がより一層求められることから、AI利用の妥当性をよく確認する。
データ分析
分析方針の検討
壁打ち程度であれば利用可能。
分析用ソースコードの生成
データ分析用プログラミング言語のソースコードの生成に利用可能。必ず処理内容を理解する。
分析結果の解釈
統計学的解釈に利用可能。ただし、考察にはそのまま利用せずに、人間が解釈の最終判断を行う。
音声や手書き文字のテキストデータ化
精度が十分であることが確認できれば利用可能。ただし、チャット形式のAIでは大量のデータを処理するのは難しい可能性がある。
データの前処理
AIにデータの前処理として整形や加工などを直接行わせてはいけない。再現性の確保のため、データ分析用プログラミング言語のソースコードを生成して前処理をする。
分析の実施
AIにデータ分析を直接行わせてはいけない。再現性の確保のため、データ分析用プログラミング言語のソースコードを生成して分析する。
グラフや表の作成
AIにグラフや表を直接生成させてはいけない。再現性の確保のため、データ分析用プログラミング言語のソースコードを生成して図表を生成する。
質的データのコーディング
挑戦的利用。研究内容によっては作成済みコードブックによる分類補助などに利用できる可能性がある。ただし、再現性を十分確保する必要がある。
執筆・発表
発表先・投稿先の検討
利用可能だが、漏れに注意する。
アウトライン決め
壁打ち程度であれば、発表内容の構成のアウトラインの設計に利用可能。
本文の執筆
下書きであれば利用可能な場合が多いが、内容の精査が求められる。なお、一部の出版社は下書きの生成も禁止している。
文章の校正
文法の誤り・誤字脱字・表記ゆれなどのチェックや、文章表現の改善などに利用可能。
引用文献リストの作成
DOIなどの書誌情報を入力した下書きの生成に利用可能だが、あくまでも下書きであり、必ずすべての文献についてチェックをする。
引用文献リストと本文の対応チェック
本文中の引用表記との対応関係のチェックに利用可能。
原稿フォーマットとの整合チェック
利用可能だが、完璧に修正されるとは限らないため過信しないこと。
本文の英訳
利用可能だが、翻訳後に確認を行う。
概念図の作成
グラフではなく単純構造の概念図であれば作成に利用可能。ベクターデータなどの編集可能な形式で作成させ、そのデータを人間が修正することが望ましい。ただし、グラフィカルアブストラクトの出力は禁止されていることがある(Elsevier, 2026)。また、意図しない著作権侵害にも気をつける。
スライド・ポスター作成
既存情報のレイアウトのみに利用可能。新たな情報を生成させてはいけない。AIを用いたスライドやポスターは観衆に敬遠されやすいことに注意する。
口頭発表の台本の作成
下書き程度なら利用可能だが、機械的で伝わりづらい台本となる恐れがあるため注意する。
デモ映像用の音声作成
デモ映像の説明音声の生成に利用可能。日本語だけでなく他言語の音声も生成できる。実在人物の声を生成しないように注意する。
プレスリリース作成
下書きの生成に利用可能。
成果報告書の作成
年度末報告などの際に、成果物を入力して報告文を生成させることなどに利用可能。
その他
プロジェクトのタスク整理
タスク列挙やガントチャート作成などに利用可能。
会議資料作成
アジェンダや議事録の作成に利用可能。議事録作成は、Zoomなどのオンライン会議ソフトウェアの音声要約AIツールなどを利用しても良い。
事務資料の要約・検索
研究費執行マニュアルや公募要領などの要約や検索に利用可能。
メール執筆
とくに国際共同研究の際に有効。
研究業績整理
スプレッドシートを用いた整理や、researchmapへのインポート用のCSVファイル作成など、業績管理に利用可能。
Web制作
研究室のWEBサイトやポートフォリオページの制作に利用可能。
研究費・助成制度の申請書作成
補助的に利用可能。自身の能力では実現できないことを記載しないように注意する。
研究費・助成制度の審査や倫理審査
審査資料をAIにアップロードする行為は禁止されていることがほとんどである(2027年度科研費公募要領など)。
査読
審査資料をAIにアップロードする行為は禁止されていることがほとんどである。また、人間が査読を行うこと自体が合意形成における重要な要素となっている。なお、Elsevier(2026)は、査読結果報告書の文章表現など、機密情報を含まない場合の補助的な利用は認めている。
制作背景
- 本ガイドは、日本心理学会第90回大会の大会企画シンポジウム「心理学研究者のためのAI活用最前線2026 ―広がる「AI for Science」:文献調査・論文執筆・研究費申請まで―」への登壇に伴い、杉本海里(早稲田大学)が企画・製作・公表したものです。
- 心理学研究における生成AIの利用可能性が網羅的にまとまっている資料がないという問題について、日本心理学会若手の会よりご相談いただいたことをきっかけに、本ガイドが制作されました。とくに、論文執筆プロセス以外における生成AI利用のガイドが不足していたため、本ガイドでは論文執筆過程以外も網羅的に整理しています。
- 国家レベルの潮流として、研究活動においてAI活用の対象範囲を広げ、新たな価値創出につなげることが求められています。たとえば、日本のAI政策の方針として2026年7月に閣議決定された「人工知能基本計画~日本AX、より強く、より豊かに~」では、「あらゆる主体が無謬性や前例踏襲にとらわれず、『まずやってみる』という精神を増進する」と記載のある通り、積極的にAIを活用していく方針が示されています。
- 本ガイドでは、学生用ガイドと研究者用ガイドを分けています。さまざまな出版社が生成AI利用ポリシーを公開していますが、それらは研究者向けのもので学生に同じ指針を適用するのは妥当ではありません。教育場面での利用においては、AIが学習効果にもたらす弊害が知られており、研究者用ガイドよりもやや厳しく利用可否を設定しています。一方で、一律禁止にしてしまうと不適切な利用がむしろ助長されることが懸念されるため、利用できることも明瞭にすることによって学生のAIの適正利用を促します。
- 本Webページのデザインは、ベクターグラフィックソフトウェアによって人間がデザインを行い、そのデザインをAIによってコードに変換し、人間がデザインの最終調整を行うことで制作されました。本Webページの一部の配色は、「NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(2018)カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット ガイドブック第2版」に基づくことで、色覚多様性に配慮しています。フォントには、「LINE Seed JP」のWebフォントを使用しています。
- 参考資料
- 本資料の利用実態の把握のため、授業や資料作成などで利用する際は、可能でしたら利用報告をお願いいたします。
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